宝石の正しい価値を見極めるために重要な「宝石鑑定・宝石鑑別」ですが、どんな事ができるのかよく知らないという方も多いのではないのでしょうか。本記事では、宝石の鑑定と鑑別についてご紹介いたします。鑑定書と鑑別書の違いや、料金などについても解説していますので、是非チェックしてください。
宝石の鑑定・鑑別とは?
宝石の鑑定・鑑別とは、「宝石がどのような種類で、どのような品質なのか」を調べることを指します。
ダイヤモンドなどの宝石は、安いものから高いものまで幅広い価格で販売されています。
しかし、「本当にこの値段に見合った品質の宝石なのか」という点は、一般消費者には少々分かりづらいもの。
そういった時に宝石の鑑定・鑑別を行うことで、正確に宝石の品質や価値について詳しく知ることができるのです。
また、宝石の鑑定・鑑別は、人から譲り受けたジュエリーの宝石の詳細を知りたい時にもおすすめ。
宝石の種類や品質が分かれば、受け継いだジュエリーの正しい身につけ方や扱い方を知ることもできます。
また、近年話題のジュエリーリフォームを利用して、譲り受けた宝石を新たなジュエリーに生まれ変わらせるという楽しみ方もあります。
宝石の鑑定結果・鑑別結果を記録した書類は、鑑定書・鑑別書と呼びます。
婚約指輪やハイジュエリー(高級ジュエリー)の場合は、購入の際に宝石の鑑定書・鑑別書が付属しているケースがあります。
ただし、鑑定書・鑑別書はあくまで宝石の種類や品質を保証する書類です。
鑑定書・鑑別書があるからといって「品質の良い宝石」とは限らないため、注意が必要です。
鑑定書と鑑別書の違い
ジュエリーや宝石を購入した時に付属していることも多い「鑑定書」や「鑑別書」。
どちらも宝石について書かれているものですが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
鑑別書は、宝石に含まれている成分を科学的に検査して宝石の種類や真贋(本物か偽物か)などを証明する書類です。
鑑別の検査では、宝石の種類を特定できるだけでなく、天然石か人工石かを調べることも可能です。
ダイヤモンドからカラーストーンまであらゆる宝石が対象です。
一方の鑑定書は「ダイヤモンド・グレーディング・レポート」とも呼ばれる通り、ダイヤモンドの品質を証明する書類です。
鑑別書がすべての宝石を対象に発行されているのに対し、鑑定書はダイヤモンドにのみ発行されます。
多くの場合、0.1カラット以上のダイヤモンドに鑑定書が発行されます。
宝石の鑑定書に書かれている主な項目
ダイヤモンドの鑑定書に書かれている主な項目は、以下の通りです(項目の詳細については、鑑定を行う機関によって異なります)。
カットの種類
ダイヤモンドのサイズ
ダイヤモンドの4C
ダイヤモンドの蛍光性
それぞれの項目について詳しく解説します。
カットの種類
ダイヤモンドがどのような形状でカットされているかを記載します。
ダイヤモンドの主なカットの種類としては、ラウンドブリリアントカットなどがあります。</p>
ダイヤモンドのサイズ
真上から計測したダイヤモンドの幅(最大値・最小値)と高さを表記します。
さらに、テーブル、ガードル、パビリオンなどダイヤモンドの各部位の細かいサイズも計測します。
単位はミリメートルを使用します。
ダイヤモンドの4C
鑑定書には、ダイヤモンドの品質評価基準である4C</strong>についても記載されます。<br>
ダイヤモンドの4Cとは、以下の4項目を指します。</p>
カラット
カラー
クラリティ
カット
カラット
カラット(Carat)とは、宝石の重量を表す単位です。
ダイヤモンドは1カラット=0.2グラムと国際的に決められており、ダイヤモンドの重さを測ることでカラット数を知ることができます。
カラット数が高ければ高いほどサイズが大きく希少のため、高い価格で取引されやすいです。
ジュエリーの場合は、裏側など目立たない箇所に記された「D 0.35(ダイヤモンド0.35カラット という意味)」などの刻印でダイヤモンドのカラット数を確認することができます。
カラー
カラー(Color)の項目では、ダイヤモンドの石の色の濃淡を記載します。
ダイヤモンドは無色透明のイメージが強いですが、イエローやブラウンカラーのダイヤモンドも多く産出されています。
鑑定書では、色の薄い順にD(無色)~Z(色味あり)まで23段階のグレードでカラーを記載しています。
特に「無色(カラーレス)」と呼ばれるD・E・Fランクのカラーは最も高いランクの評価となり、婚約指輪などに使われることが多いです。
一方、T~Zランクは色味あり(ライト)のランクに位置づけられます。
しかし、濃い発色のファンシーカラーダイヤモンドであればD~Fランク以上に高い価格で取引されます。
クラリティ
クラリティ(Clarity)の項目では、ダイヤモンドの透明度について記載されます。
天然ダイヤモンドは地中で形成される鉱物です。
そのため、宝石としてカットした後も内包物(インクルージョン)や傷・欠け(ブレミッシュ)などが残り、透明度に影響を及ぼしてしまうケースがあります。
鑑定書では、傷や内包物が少ない順にFL(無欠点)~I3(欠陥)の11段階のグレードで透明度を記載しています。
内包物や傷が目立ちやすいSI1〜I3ランクは、一般人でも肉眼や10倍ルーペなどで内包物を確認しやすいです。
一方、VS2以上のランクは傷・内包物が目立ちにくく、一般人では10倍ルーペを使用しても傷・内包物を見つけるのは難しいと言われています。
カット
カット(Cut)の項目では、ダイヤモンドのカッティングによる輝きについて記載します。
婚約指輪に多く使われるラウンドブリリアントカットは、カットにランク付けがされる唯一の形です。
ラウンドブリリアントカット以外の形(クッションカットなど)では、カット以外の評価基準が定められています。
鑑定書では、Excellent(最上級)~Poor(劣る)の5段階のグレード</strong>でダイヤモンドの輝きを記載しています。
中でも、総合的なカットグレードと仕上げの2項目で最高評価のExcellentを獲得したダイヤモンドはトリプルエクセレント</strong>と呼ばれます。
また、カットはダイヤモンドの4Cの中で唯一、人の技術によって評価が左右される要素でもあります。
カラット・カラー・クラリティはダイヤモンド原石の品質によってランクが決まりますが、カットは宝石職人のカット技術によって最高ランクにも最低ランクにもなり得ます。
ダイヤモンドの蛍光性
天然のダイヤモンドの中には、紫外線(ブラックライト)を照射することで蛍光色に発色するものがあります。
これはダイヤモンドに含まれる窒素や水素などが紫外線に反応して起こる現象で、青や黄色に発色することがあります。
鑑定書では、ダイヤモンドを紫外線に当てた時の蛍光発色の程度(色の具合や発色の強さ)を記載します。
宝石の鑑別書に書かれている主な項目
宝石の鑑別書に書かれている主な項目は、以下の通りです(項目の詳細については、鑑別を依頼する機関によって異なります)。
宝石の種類
カットの種類
サイズ・色・透明度
その他の特徴
宝石の種類
鑑別した宝石の鉱物名(コランダム、ベリルなど)を記載します。
天然宝石の場合は「天然コランダム」などと記載されます。また、鉱物名と共に宝石としての名称も記載されます。
宝石のカットの種類
鑑別した宝石がどのような形状でカットされているかを記載します。
オーバルカットやエメラルドカットなど、様々なカットの種類があります。
宝石のサイズ・色・透明度
鑑別した宝石のサイズ(縦・横・深さ)、重さ(カラット)、色味、透明度などが記載されます。
サイズと重さについては、ジュエリーなど台座付きの場合は「測定不可」となることもあります。
宝石の屈折率
鑑別した宝石に光が入る際の屈折率(光の曲がる角度)を記載します。
屈折率は宝石の種類によって数値が決まっています。
宝石のその他の特徴
鑑別した宝石の蛍光性、多色性、偏光性などを記載します。
宝石の種類によっては、これらの特徴が見られないこともあります。
宝石の鑑定・鑑別はどこでできる?
宝石の鑑定や鑑別は、おもに以下の3箇所に依頼することができます。
宝石鑑定・鑑別の専門機関
ジュエリーショップ
ジュエリー買取専門店
ここからは、それぞれの特徴を解説します。
宝石鑑定・鑑別の専門機関
最も正確で信頼性の高い宝石の鑑定・鑑別を行うのが、宝石鑑定・鑑別の専門機関です。
日本国内だけでも100社以上の鑑定機関が存在しますが、これらの鑑定機関はランクによって信頼性がまったく異なります。
その影響力は「どの鑑定機関で鑑定書・鑑別書を発行するかで宝石の価格が変わる」と言われるほど。
最も信頼できる最高ランクの鑑定機関は「A鑑」と呼ばれます。
A鑑の中でも特に代表的な鑑定機関としてはGIA(米国宝石学会)、CGL(中央宝石研究所)、AGTジェムラボラトリーが挙げられます。
GIAはアメリカの権威ある鑑定機関で、ダイヤモンドの4Cを定めたことでも有名です。
CGLとAGTは日本の鑑定機関で、特にAGTはカラーダイヤモンドの鑑定に力を入れています。
これらの鑑定機関に依頼すると、鑑定・鑑別した宝石の科学的に正確な情報を知ることができます。
しかし、指輪などジュエリーの状態では鑑定・鑑別を受け付けていない鑑定機関もあるため、注意が必要です。
ジュエリーショップ
ジュエリーショップの中には、宝石の鑑定・鑑別における国際的な資格であるGIA GG(Graduate Gemologist)やFGAを取得した宝石鑑定のプロフェッショナルが在籍しているお店があります。
これらの資格を有した宝石鑑定士が在籍するジュエリーショップの中には、お客様の持ち込みの宝石を鑑定・鑑別するサービスを行っている場合があります。
手軽に宝石の鑑定・鑑別を依頼できますが、鑑定機関と比較すると正確な鑑定結果を得られないケースがあります。
ジュエリー買取専門店
ジュエリーショップと同じく、宝石買取専門店の中にはGIA GGやFGAなどの信頼できる資格を取得したスタッフが在籍しているお店があります。
鑑定機関のような正確な鑑定結果は得られませんが、宝石やジュエリーの資産価値を査定してもらうことができます。
ただし、一般的な買取店では宝石の鑑定・鑑別を依頼できない場合もあるため、注意が必要です。
宝石の鑑定・鑑別の料金はいくら?
宝石の鑑定・鑑別の料金は、鑑定・鑑別を依頼する場所によって大きく異なります。
ほとんどの場合、宝石の鑑定・鑑別は有料です。
鑑定する宝石の大きさや宝石の種類によって料金が異なるため、事前に確認することをおすすめします。
たとえば、CGL(中央宝石研究所)に宝石鑑定を依頼した場合は、以下のような料金となります。
ダイヤモンドのグレード(鑑定)……1,980円~
グレーディングレポート(鑑定書)発行……3,630円~
宝石ソーティング(鑑別)……2,200円
鑑別書発行……3,630円~
※2023年1月時点
多くの場合、宝石1つあたり数千円程度から鑑定・鑑別を依頼できます。
より詳細に鑑定・鑑別してもらう場合や、大きい宝石の場合は、数万円以上かかる場合もあります。
宝石の鑑定書・鑑別書は再発行できる?
ジュエリーや宝石の購入時に付属していた鑑定書・鑑別書を失くしてしまった場合でも、鑑定書・鑑別書は再発行が可能です。
多くの場合、鑑定書の再発行はジュエリーや宝石を購入したお店または宝石鑑定機関に依頼することができます。
ただし、鑑定機関に再鑑定・再鑑別を依頼する場合は、宝石をジュエリーから外す必要があります。
宝石の鑑定・鑑別にはメリットがたくさん
ここまで、宝石の鑑定と鑑別について解説しました。
宝石の鑑定書や鑑別書を発行することで、私たち一般消費者も宝石の正しい品質や価値を詳しく知ることができます。
譲り受けた宝石やジュエリーは、自分の好みに合うデザインにジュエリーリフォームするのもおすすめです。
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